大抵のケースは咬合器を使って補綴物を製作します。
どういう訳かよく使われるのに新製品の発売サイクルは異様に長いのです。
ですので当方にある30年前の咬合器も現役で使われています。
ただ、比較的新しいものは斜めに傾けて作業する事ができます。
たったそれだけの事ですが、前歯部製作の際にはこれがとても便利なのです。
カボのプロター、アマンギルバッハのアーテックス、イボクラールビバデントのストラトスなど比較的新しく高額な咬合器はこの機能が付いていますが、古いものや安価な咬合器にはありません。
当方でも使用している韓国製のCSA咬合器は、安価にも関わらずよく出来ていてこの機能も付いています。
ですので、前歯部製作の際はCSA咬合器を使うことがほとんどです。
でも、たま〜に足りなくなったり、小臼歯ぐらいの補綴でも使いたいことがあります。
というわけで、手持ちの咬合器をプチ改造することにしました。
候補に上がったのはクイックマスター咬合器とアーテックス咬合器の旧バージョン。
ハノーやデンタータスもあったのですが、重いのとゴツいので今回は見送り。
クイックマスターは一時期クロスマスター咬合器という名前で正規輸入されていましたが現在は取り扱いなし。
アーテックスは旧タイプなので、現在販売されているものと共有できるパーツはありますがほとんど別物です。
ありがたい戴き物咬合器ばかりなので種類がバラバラなのです。
フレームをいじくる事は厳しいので、イボクラールビバデントのストラトス咬合器を参考にして、後方にサポートピンをつけることにしました。
いっその事このピンだけ購入して付けられれば楽だなぁ〜と思いました。でも部品名もわからなければ、天下のイボクラール製品。安い訳が無い。(笑)
調べたらインクラインサポートピンという名前だそうです。
ステンレスの棒をホームセンターで物色するも、か弱い私の指で曲げられる強度ではなさそう。直径1mmが限界だ。
使えそうな既製品を探しに100均ショップを何軒もハシゴ。
ようやく見つけました!セリアという100均ショップのペットボトルホルダーです。直径2.4mmのステンレス製。
形もバッチリ!
出来ることなら咬合器に穴を開けたりといった侵襲は最小限で済ませたいものです。
色々と検討した結果、ラボに転がっていたジュラコン板(ポリアセタールと呼ばれる熱可塑性樹脂)を加工して取り付けることにしました。
問題は咬合器とジュラコンパーツの連結です。アーテックス咬合器にはなぜかネジ穴が2つ切ってありましたのでこれを使用。適当に余っていた皿ネジを合わせたらビンゴ!長かったのでカットして固定。
クイックマスター咬合器は軽量化のため全体が樹脂で出来ています。肉抜きのため裏面はトラス構造になっているので、少し削ってアンダーカットを付与。そこに即重を流しジュラコンのネジと連結固定。
ピンの入る穴はミリングマシンにて適当にドリリング、ピンを加熱して差し込みピッタリ合わせ。
バー鉗子で角度をつけて完成。
おぉ〜イイじゃない!自己満足の自画自賛だけど思っていたよりも安定している。不要な時はピンを脱着できるし、掛かった経費は200円。これでウイリーできる咬合器は合計4台ある。あとはケースが送られてくれば・・・
歯科医師の皆様、当方の咬合器には若干の余裕がございます。ケースのご依頼お待ちしております!